fc2ブログ
朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
在職中は私は仕事、D子は家事。 明確な分業が成り立っていた。誰がいつ決めたか知らないが、そうなっていた。 

かなり昔の話だが、待ちに待った定年退職がやって来た「ハッピーリタイアメント、さあ!のんびるするぞ!」と喜び勇んだのは、つかの間。厳しい現実が待っていた。

予期に反して、なんだかんだと居心地が悪い。しばらくすると自分の立場に気付いて愕然とした。我家はいつの間にかD子の支配下にあり、私の立場は何も知らない新入社員の様なものになっていた。

しかし、こんなことで負けてはいられない「家でノンビリ」は長年の憧れ。どうしても譲れない一線だ。 創意と工夫で、この難局を打開しようと決心した。

「私はこの作戦の必勝を期して『オペレーション・ゆとり』と命名しました」
「おいおい、女房の尻の下から脱出するのに、作戦かい」
「敵を甘く見てはいけません。 作戦目標は『ノンビリした暮らしの奪回』です」
「オレはとっくの昔からやってるよ」
「奥様の手のひらで踊っているだけです。陰で笑われているのをご存知ないのですか」

半年もすると、二人暮らしのコツも身についてきた。「嫌・駄目・出来ない、はご法度」。何も一生懸命やることはない。とりあえずは「うんうん、それもいいね」と言っておけば、万事OKだ。

「仕事を止めたんだから、家事は半々にしようね」と言われてもビックリすることはない。「うんうん、それもいいね」と言って置けばいいのだ。

別に、何時からと言われた訳ではない。「うんうん、いいね」で充分である。しかし、「明日からやってよ」と言われたら、少々知恵を働かさなければならない。

「うんうん、いいね」は決まり文句だから、そのままで良い。難しいのは後半だ。間違っても「出来ない」とは言ってはいけない。そんなこと言ったら最後、厳しい訓練が待っている。D子は決して甘くはないのである。 

「明日、あさっては予定があるので、3日後からやります」と、とりあえずは先送りする。3日後に同じことを言ってくることは滅多にない。D子は忘れっぽいのだ。敵の弱点は充分研究してある。 

もし言ってきたとすると大変だ。忘れっぽいD子が3日も覚えていたのだ。ただ事ではない。毅然とした対応が必要となる。

「三日がどうした!四の五の言うな。オレをなめるな。甘くはないぞ~!」
「ほ~ぉ、それで、D子さんはなんて言った」
「六でなし~!」

11月23日、北国の公園だが、池が凍結し始めている。カモが好む水場が狭くなり、だんだん居心地が悪くなってきたようだ。全てが凍結すると、池から出て同じ園内の川に移動する。家庭内の居心地の悪さに耐え切れず、外に憩いを求める情けない男に似ていて、身につまされる。

トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック