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朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
懇親会の席でMさんに「次のエッセイはなに書くの?」と聞かれた。嬉しかったが、まだ何も決めていない。
「困りましたね~。 どうしましょう」。先輩のSさんに相談した。
「宴席だろう。座を盛り上げる為のお世辞に決まっているじゃないか」
「期待して待っていたら、悪いじゃないですか」
「そんなことは絶対にない! 聞いたことも忘れているはずだ」

でも、万が一ということもある。ともかく「なに書くの?」と問われたのは生まれて初めてだ。何が何でも期待に応えたい。すると、ある光景がパッと浮かんだ。何でもないことかも知れないが、私にとっては夢のような出来事。

顰蹙を買うことを覚悟で書くことにした。ある夏の昼下がり、Bさんから突然電話がかかって来た。「わたし、分かる? 今あなたの家の前の公園、ちょっと出られる」なんだろう。小さな期待と不安が入り交ざった。ともかく出てみよう。公園はすぐそこだ。

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彫刻クイズラリーの舞台ともなった中島公園ほぼ中央の「香りの広場」。昔は「百花園」と呼ばれた場所。Bさんは私より年上で、お洒落な人。社交的で何もかも私とは正反対。年上のご主人とは、大きな家での二人暮らし。優雅なものだ。

ベンチのある広場に行ってみたが、見当たらない。見渡すと、やや遠くの方にスラックス姿の女性が一人。洒落た帽子にサングラス、脚を組んでタバコを吹かしていた。遠目で歳は分からない。ひょっとしたらと思ったが、彼女はタバコを吸わない。アチコチ見渡したが、らしい人はいないので念の為近づいてみるとBさんだ。ニヤッと笑って開口一番こう言った。

「私、フランス映画みたいにタバコを吸いながら男を待ってみたかったの」
不思議なことに、幾つになっても、こんなセリフが似合う人だ。 
一方わが身を省みれば、粗末な自分ここにあり、という感じだ。 
「似合ってますよ。様になっています」と、情けない男役の私。 

ところで、この日から数日前Bさんの友達と3人でお茶を飲んだ。遠来のお客様をもてなすつもりで、「ここは私が持ちましょう」と言った。何を勘違いしたかBさんは、「私、男と認めた人からしか奢られたくないのよ」と来たもんだ。

一瞬ムッとしたが、これもBさん独特の気遣いかなと思い直した。私の懐具合を心配してね。だけど、彼女はこの一瞬を見逃さなかったと思う。だから、お返しに来たのだ。 つまり、「男と認めない人」から「男」への昇格を、わざわざ伝えに来てくれたのと思う。Bさんは一見ざっくばらんな感じだが、細かいことを気にする人だ。だから18年も付き合っているが、お互いに年を取ったものだ。

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