朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
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飲んで飲んで嘘をつく
札幌シニアネット(SSN)の「わいわい炊事遠足の最中だが、水を飲みたくて仕方がなくなった。何故だろう? ジャガイモなどの野菜は美味しく味付けされていた。豚汁やあら汁も美味しくて食べ過ぎた。鶏焼きは絶品、大きな肉片を三つも食べてしまった。そのせいで喉が渇いたのだろう。ふと、用意したスペシャルドリンクを思い出し、とりあえず飲んだ。

飲食タイムも終わり広場ではイベントが始まっていた。ゲームを見ながらスペシャル・ドリンクと称する薄いウイスキーの水割りを飲んだ。喉がかわいていたのでチビチビ飲むつもりがグイグイになってしまった。バスの待ち時間も話しながら飲んだ。バスの中でも飲んだ。最初は喉を潤す為だったが、次第に美味しくなって来た。そして心地よくなってしまった。

約20人が真駒内駅から地下鉄で帰るために貸切バスを降りた。一緒に歩いている友人から「顔が赤いね」と言われ、これはシマッタしくじったと思い、「少し遅れて歩きますね」と言って離れようとすると腕を取られた。

気持ちは有難いが、顔が赤い以上はグループからは離れなければいけない。お仲間が酔っ払いでは、さぞかし恥ずかしかろうと、ほろ酔い加減の私は考えた。「バスで行きます」と言って皆さんとは反対方向に歩いて離れることにした。

しばらくベンチに座って時間をつぶした。もういいだろうと思って地下鉄のホームに行くと、まだ発車していない。とっさに柱の陰に隠れて次の地下鉄を待つことにした。嘘をついたり隠れたり、いろいろ気を使って心の底まで乾いて来た。座席について又飲んだ。緊張すると何故か飲みたくなる。

近頃の若い者は地下鉄の中で化粧をしたり物を食べたり周りの目を全く気にしない。公共の場所を何と心得ているのか、とか新聞で読むとフムフムとか肯いていたが、今の私に周りは見えない。どうでもいいやと思って又飲んだ。

こんな私を若者が見たらどう思うのだろうかとか考えていると、突然50年前にタイムスリップした。若い時にそんな高齢者を見たような気がする。「軽蔑すべき哀れなジジイ」と思い批判する気さえ起きなかった。”無視”、私だけでなく皆で無視した。

車内の人は私に無関心のようなフリをしているが心の中で軽蔑すべきジジイと思っているに違いない。急に恥ずかしくなり、穴があったら入りたいと思ったら突然暗くなった。「次は~、ひらぎし~、平岸」。高架を走る地下鉄はここから地下に潜る。

我が家の最寄り駅に着いた頃はフラフラしたのでエレベーターで地上まで上がった。10分ほどヨタヨタ歩くと住処の共同住宅が見えてきた。玄関の前でこちらを窺っている人が居る。近づくと出かけるときにお会いした愛想のいい奥様だ。

「お疲れ様。お孫さんのお世話は大変でしょう」
逆光線だから私の赤い顔までは見えないようだ。
「有難うございます。大変でもないですよ」
お孫ささんって何だろう? と思ったが、今朝会っただけの人に質問はできない。
「そうですか。足がフラフラしていたものですから」
思い出した。朝の出かけに”お孫さんと楽しんでください”と言ってくれた人だ。
「孫は来てよし帰ってよしですね」

とか、思わず何処かで聞いたようなセリフを口にした。孫も居ないくせに話を合わせている。なんだかんだと朝から晩まで嘘ばかりついていたような気がする。そのせいか家に着くとどっと疲れが出た。

炊事遠足の前半は食べてばかり、後半は飲んでばかり、振り返ってみると人様の為になることは何一つしなかった。一日中ろくでもないことばかりしていたのに、札幌シニアネットの人も、近所の奥様も親切にしてくれた。図らずも小さな幸せをもらってしまったのだ。神様は不公平だ。御心にかなわない行いばかりしている私に、好いことばかり授けて下さる。素晴らしき哉、人生! 密かに感謝。

「喜んでいる場合じゃないよ」
「なんでですか?」
「今に罰が当たるからね」
「どうして?」
「人生山あり谷あり、楽あれば苦あり、幸不幸は同じ量だけやってくる、幸福と不幸せは背中合わせ、神は全てお見通し、もっと言って欲しいかい」
「………」
「なんで黙ってんの!」
「沈黙は金」
「ふん」
「よどみなく話せることも大事ですが、黙るべきときを知ることは、もっと大事です」

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【2015/09/19 00:00】 | 札幌シニアネットssn
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