朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
「オレオレ」と言われて何故か嬉しかった。私は居るのか居ないのか分からない人。ハナちゃん、タロちゃんの世界でも私だけはPPさんと呼ばれ、他人行儀だ。念の為に申し添えるがPPはハンドルネーム。そこに佐藤とか実名をあてはめて読むと寂しい状況が見えて来ると思う。多分面白味がないから親しめないのだろう。

ところで、なぜオレオレかと言うと、カラオケで偶然「俺は待ってるぜ」と「霧笛が俺を読んでいる」を歌ったからだ。寂しさを胸に抱いていた私は嬉しくなり、つい調子に乗って「俺は寂しいんだ」もやってしまった。しかし、ここまではイントロの部分、本当に歌いたいのは「俺はお前に弱いんだ」。いつの日か札幌シニアネットのカラオケクラブで歌ってみたいと思っている。

「なんでシニアネットのカラオケクラブなんだ」
「そこが私にとって最高の舞台だからです」
「他にも行っているのか?」
「行ってますよ。福住だけどね。そこでは私が一番若いのです」
「なんだ、周りは年寄ばかりか」
「そうなんですよ。自然減が寂しいですね」
「しぜんげん?」
「はい、最近お亡くなりになった方も居られます」

ともかくカラオケクラブで「俺はお前に弱いんだ」を歌い、あの名セリフを言ってみたいのだ。「しょうがない娘だな甘えてばかりいて…」とかね。この考えを先輩に話すと、
「いいじゃないか。ちょっとふざけて言えば笑いが取れるかも」と、のたもうた。
「お言葉ですが、このセリフは心を込めて語りたいのです。愛しているから不幸にしたくない。こんな想いを表現できればと思っています」

歌が下手だから笑って楽しんでもらおうと言う発想は先輩も私も同じだが、アプローチの仕方がぜんぜん違う。それに私は大勢の前でふざけたり出来ない性格だ。例えば、映画「男はつらいよ」の寅さんは大真面目で恋を語り愛を語ったり、似合わないことをして観客の笑いを誘っている。私の狙いはそこにあるのだ。

自慢じゃないが寅さんよりモットモットみったくない。その私が格好つけて、「しょうがない娘だな甘えてばかりいて…」とか、キザなセリフを言えば、それだけで笑いの渦が巻き起こり、場が盛り上がるのではないか。愚かな私はそう考えた。

「それで…、実行したのか?」
「慎重かつ前向きに検討しているところです。笑いを取るのは簡単ではありません」
「まだやってないんだな。そりゃ良かった」
「はい、頑張ります」
「ダメダメ止めときな」と、先輩は私の名案にいつも水を差す。
「はぁ? なんでですか」
「シーンと静まり返ったらどうするんだ」

笑いの嵐でも感動による静粛でも、どちらでも良いではないか。肝心なのは感動を与えることである。仮に心から感動して胸をときめかせた方が居たとしても、私はそれでいいと思う。笑い・泣き・胸をときめかせてこその人生ではないか。

「なぁお前、自分より下手な歌を聴いたことあるのか?」
「全然ありません! みんな凄く上手いのですよ」
「それが何を意味するか良く考えるんだな」

先輩から言われて良く考えたら分かった。何ということもない。私が一番下手なのだ。しかし分かるまでの道のりは長かった。自分が経験しないことを、想像だけで理解することは難しい。
「分かりました。何もセリフなんかで工夫する必要はないですね。今のままでもかなり可笑しいのに誰も笑いません」
「そこが肝心だ。寒気がして笑えないんだよ」

下手な歌を聴くことはかなりシンドイことらしい。むさくるしい爺さんが幼児のように真剣に歌っている姿が目に浮んだ。こんな感じだろうか。聞いている方は笑うどころか、恥ずかしくなるかも知れない。先ほど考えた裕次郎のセリフなどを入れたら大変だ。我慢の限界を超えて爆発するかも知れない。おお怖い。怖い怖い。

そう言えば30年前ぐらい前に爆発した人が居た。私は反省して20年間カラオケを止めた。やはり私にはカラオケゲームでも退場ルールが必要だ。
「下手くそ止めろと3回言われたら退場することにしました」
「そんなこと腹で思っても口には出さないよ」
「顔に出るでしょう」とは言ったものの判定が難しい。

何の遊びも出来ない私だが、かような状況の中で何とか楽しませてもらっている。人様に迷惑をかけるのが心苦しいけれど仕方がない。私だってたまには歌って笑って楽しく過ごしたい。今は無職。仕事から解放されたのだから、真面目なフリも、出来るフリもしなくていいのだ。

「自分の楽しみのために人に迷惑をかけるのは良くないよ」
「気分転換のつもりですが」
「ダメなものはダメ」
「私の歌が大好きで聴くのを楽しみにしている方も居るかも知れませんよ」
「無い! 絶対に居ない。第一、自分で歌はダメと言ってたじゃあないか」
「私は『かも知れない話』をしているのです。その反対も有りでしょう」
「なんだと?」
「発想の転換をしただけです。何か問題でも?」
「………」

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【2015/12/26 00:00】 | 札幌シニアネットssn
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歌えば楽し!
花筏

「オレオレ」に続く言葉はてっきり詐欺と思いましたが、
カラオケの世界にも「オレオレ」があるんですね。

待ってるぜ、霧笛が呼んでいる、淋しいんだ、お前に弱いんだ・・・・・
並べてみると、ロマンティックな言葉が多いです。

PPさん自身が夢みる紳士なのでしょうね、きっと。

夢を見るのは大好きです
PP
紳士ではないけれど、夢を見るのは大好きです。
いろいろ空想して楽しんでいます。
いろいろな人から夢や空想の話も聞きいてみたいです。
あまり話してもらえないので代わりにドラマをみています。

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