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朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
会話とは不思議なものだ。初対面なのに理解し合えるような気分になる時もあるし、何十年も一緒に暮らして居ても何も通じない場合がある。QPとは一緒に暮らして半世紀にもなるのに依然として話が通じない。それなのに、自分の聞きたいことを何の前触れもなくポツリと一言で聞き、丁寧な説明を拒否するのだから癪に障る

「台風は上陸したら、そこに留まるのかい?」
「そういうことも稀にあります」
「留まるの、動くの、どっち!」
「台風は北半球では反時計回りの渦を巻きながら北、あるいは北東方向へ……」
「分かった。もういいよ」

まだ話し終わっていないのだから分かるはずがない。QPは不満なようだ。その理由は後で分かったが、ハッキリした答えが必要だったのだ。情報をいっぱい持っている気象予報士だって外れることがあるのに、テレビと新聞だけに頼っている私に分かる訳がない。どっちと言われても戸惑うばかりだ。

「沖縄に上陸したんだって」
「そうですか」
「上陸したら留まるんじゃないの」
「そうですね。旅行でも移民でも戦争でも、長いか短いかはともかく、上陸したらそこに留まるのが普通ですね」。QPの顔を立て上陸と言う意味に関して同意する。
「だから台風はどうかと聞いているんだよ」
「台風に興味があるのですか?」
「お天気は大切だからね」

気象に興味を持ってくれたのなら結構なことだ。朝の食卓での話題が一つ増える。噂と事件とファイターズだけでは間が持たない。会話がきっかけで喧嘩になることもあるが、お天気なら大丈夫。一番無難な話題として世の中で認められている。私も安心して話すことができるのだ。

ところで、二人暮しのことだが実際には、一日の内ほとんどの時間を別々に暮らして居る。家の中の領地は二つに分かれているが、私の領地はPP寝室だけ。ここに私の持ち物全てが押し込まれている。下の画像をよく見ればテレビの左側に椅子がある。白い三角形はベッドの一部。椅子をどかさないとテレビが見えない。パソコンをする時は椅子を移動して座る。狭いから何かを移動しないと何かを使えないのだ。
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一方、QPの領地は居間+QP寝室+台所、その他もろもろと広い。別に私が虐げられている訳ではない。QPが全面的に家事を担当しているので、そうなっている。家の中での働きが大きいほど大きな領地を持つが、領地は小さい方が楽だ。通行は自由だがQPの領地に留まることは遠慮している。どこかで聞いたような話だが”QP元気で留守がいい”と思っている。居ない時は家中全部私の領地となる。居場所を替えて気分転換ができるのでとても楽しい。
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24時間別々に暮らして居るが食事の時だけは一緒だ。そして何時も一緒なのが朝食だから、テレビを消して話しながらとる。「昼ご飯は要らない」「帰りは何時」とか暮らしの上で必要な話もするが無駄話の方が多い。だからブログのタイトルも「朝の食卓」としている。なぜならネタになるような出来事は主として朝の食卓で起こるからだ。話をすれば誤解も生じるし考えの違いも表面化してケンカになることもある。

「そうですね。台風は南洋で発生し北から北東の範囲で移動しながら勢力を弱めながら消滅するのが普通です。ただし、相反する位置にある台風の勢力が拮抗したり、あるいは何らかの理由で停滞することが稀にあります。そのようなことが起これば大変です。想像を超えた集中豪雨になり……」

「もういいよ。留まるかどうか分かればいいんだから」
「気象は奥が深いから、これからが面白いのですよ」
「興味ないね。5日後にハイキングの約束があるから聞いているだけ。分かった!」
「前日になれば天気予報で分かるでしょ」
「早く分かった方がいいじゃない」

いつも成り行きで暮らして居るのに約束とは言え、なぜ5日も先のことをアレコレ心配するのだろう。5日もたてば台風などは消えることもあるし、札幌までは来ないかも知れないのだ。気象に興味を持ったと思い喜んだ私がバカだった。

「台風の予測針路なんか早くからは分かりません」
「アンタノロマだからね」
「関係ないでしょう」
「知ったかぶりばかりするから話が長くなるんだよ」
「予測は近づけば近づくほど正確になるものです」
「アンタもだいぶ近づいているから用心した方がいいよ」
「台風ですか?」
「平均寿命だよ」

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