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朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
二人暮らしの決まりとして外出予定はカレンダーに書き込むことにしている。時には読んでも分からないことが書いてある。

「なんですかこの、Aさん宅と言うのは?」
「Aさんちに行くんだよ」
「時間も書いてもらえませんか」
「朝から晩までに決まってるでしょ」
「書いてなければ分かりません」
「決まっているじゃない。いつもそうなんだから」
「あ、マージャンですか。分かりました」

いつもそうなんだからと言われれば分かる。しかし、マージャンは一人暮らしのBさん宅でやることが多い。Aさん宅でやるのは初めてだ。私に分かるわけがない。

3年前なら何故分からないかを分かるまで説明しようとした。しかし今は、分かればそれでよく、過ぎたことにはこだわらない。相手に正しい対応を求めることは、喧嘩の元になるだけで何の利益ももたらさない。単なるエネルギーの浪費。勿体ない。

ところで偶然の機会からQPがマージャンについて何も知らないことが分かった。理解しているのは役のあらましだけ、点数も牌の取り方並べかたも分からない。それで20年以上も楽しんで来たと言うのだから不思議だ。

きちんと1ヶ月に一度、朝から晩まで遊んで来る。ルールもろくに知らないのに嬉々として出かける。しかも4人の内二人は、マージャンだけの付き合いときた。古い友人同士の交流なら話はわかるが、そうでもないらしい。

「ルールも知らずによく遊べますね」
「アンタみたいにノロマじゃないからね」
「20年もやっていて点数も数えられないのですか」
「……」
「ホントに面白いのですか? それとも何か……」 
「パソコンを長いことやっているのに何も出来ないんだね。止めた方がいいよ」

QP得意の「話題そらし攻撃」だ。都合が悪くなると話題を変えて私の弱点を突く。今回も見事に突かれた。弱点とは35年もパソコンやって何も出来ないこと。忘れもしない1980年、仙台のヒロセ電機で初めて買ったのがシャープMZK2E。私の月給の2倍くらいした。珍しく反対を押し切って手にした私の宝物。
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録音用カセットテープがHDの代わり。メモリーはなんと36キロバイト。念の為だが単位は間違えていない。ギガの下のメガの下のキロ。プリンターとセットで25万円。

あれから35年たったが、パソコンのことは、ほとんど何も分からない。なるほど、これを言いたいのだな、QPは。興味ないようなフリして、肝心なところはしっかりと見ているものだ。それにしても私がパソコンが出来ないことを、何で知っているのだ? 

多分、年がら年中パソコンを買っては悪戦苦闘している姿を、冷やかに見ていたのだろう。振り返ってみればQPは、私の背中を見てパソコン嫌いになったのだ。今にして思えば良いことしてあげたと思う。無駄な苦労をさせなくてすんだのだから。

「あなたがマージャンをやろうと言うから、A子さん(息子の妻)はパソコンで遊び方を勉強したのですよ。それなのにルールも知らないなんて困ります」
「アンタが覚えればいいじゃない」
「20年もやったのですから本でも買って読めば直ぐ分かるでしょう」
「20年20年ってうるさいね。アンタなんか35年でしょ!」

これについては言いたいことが山ほどある。しかし、マージャンとパソコンとの違いを明確に説明すれば喧嘩になるから黙っていた。代わりにここに書かしてもらった。

マージャンのことはよく知らないが、ルールは変わっていないと思う。3年も真面目に遊んでいれば完全に覚えられたはずだ。それに比べてパソコンはどうだ。勉強すべきことが川の様に流れていて留まることがない。私は芭蕉の俳句にあるような静かで古い池に棲む蛙。激流を泳ぎぬく北海道の鮭にはなれないのである。

モデルチェンジも頻繁で古いハードは使い物にならなくなり、ソフトもバージョンアップに加え、新ソフトの登場も頻繁だ。こんなことを20年もやっている内にパソコンが大嫌いになってしまった。15年前から必要最小限の勉強しかしなくなり、10年前からはぜんぜんやらなくなった。

「35年もやってモノにならないんだから何をやってもダメだね」
「そうですね。私は切り捨てられたのです」
「自分の為ばかりだからダメなんだよ。人の為になることをしなさい」
「その方がよさそうですね」
「マージャンのルール覚えない。4人で楽しく遊べるでしょ。みんな喜ぶよ」

まだ、人に押し付けようとしている。そんなことは「マージャンを20年もやっているあなたが」と言いたいのはやまやまだが、グッと堪えて飲み込んだ。35年も無駄金、無駄時間をかけた身としては何も言えない。

「心の底から大好きだったのですよ」
「何だいきなり。いまさら昔の話かい」
「長い間、寄り添って暮らして来たのです」
「みんなそうだよ。掛け替えがないからね」
「今では大嫌いですが、困ったことに必要です」
「そりゃそうだ」
「人生の大半を共に過ごしてきたのに全く理解できないのです」
「腐れ縁だね。気にするな」
「どうしたらいいでしょう」
「とりあえず、無視すればいい」
「そんなことはできません!」
「じゃあ、別れるしかないな」
「今更そんな、ブログもあるし、HPだって更新しなければならないのですよ」

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