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朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
「最近ストレスが全然たまりません」
「ワタシはたまるよ」とQP。
「そうですか。私が解消してあげましょう」
「出来るわけないじゃない」
「大丈夫です」
「アンタ、なんで私がストレスたまるか分かってんの」

二人暮らしでストレスがたまるとしたら、原因は私にあるに決まっている。何が原因かも分かっている。家事をまったくやらないことだ。無職のくせになぜ何もしないのだと腹を立てイライラしているのだろう。

「貴女のストレスの原因は私ですね」
「分かってるじゃない。それなら、……」と言いかけたQPは、次なる言葉を飲み込んだ。
間髪いれずに「私が食事の支度をしましょう!」と、心にもないことを言ってみた。
「いいよ。アンタの作ったものなんか不味くて食えないから」
「不器用でごめんなさい。私に出来ることがあったら何でも言ってくださいね」

在職時代は、言われないと何もしない人を(部下として)押し付けられて苦労した。結局自分で何もかもする羽目になった。今度は私が「命ぜられないと動かない人」になろう。結末は見えている。QPは指示しないと何もしない人間が、いかにメンドクサイ存在か、いずれ知ることになるだろう。

ところで、一度拒否されたくらいで前言を翻してはいけない。それでは、心にもないことを言ったことがバレてしまう。念には念をいれよう。人間はずるいだけじゃあダメだ。ずる賢くなければいけない。

「食べるだけじゃあ申し訳ないです。私にもやらせてください。今度こそ勉強して美味しいものを作ります」
「料理って言うのはねセンスがいるの。アンタはいいよ」
「センスがいいなんて…、褒めないでください。それほどでもないのです」と誤解したフリ。
「やらなくてもいいの。分かった!」 う~ん、イライラしている…。
「そんなこと言わないで、今度こそちゃんとやりますから」 これがダメ押しのひと言。
「ダメなものはダメ!」

おやおや、ついに料理も禁止にされてしまった。褒美をもらったくらい嬉しい。掃除も禁止、させると腰が痛いと言って寝込む。お使いも禁止、頼むと違う物買ってくる。禁止がだんだん増えて来た。

その結果どうなったかと言うと私が「社長」でQPは「秘書兼雑用兼賄い」の様になってしまった。もっと分かり易くいうと、QPがお母さんで私はお子様。

「ご飯だよ」「ごちそうさん(朝の連続テレビドラマ)始まるよ」「掃除するからどいて」「薬飲んでないよ」「風呂わいたよ」と、頼みもしないのに私の予定を知らせてくれたりする。

お陰で私は、一日中「勉強部屋」に閉じこもり呼びかけに応じて食事をし、テレビを観て、風呂に入り、薬を飲む。これ、どう考えても母子ではないか? そうだよねっ。

自由時間が増えるのは嬉しい。私には物事を器用にこなす能力がない。スポーツもできないし歌も下手糞だ。しかし、私には重箱の隅を何時までも突っつく癖がある。これを何とか能力と認めてほしいのだが…。

「重箱の隅?  細かいことをいちいち突っついたら嫌われるよ」と先輩。
「例えていえば、真ん中のご馳走は人様に差し上げて、隅っこを突っつきたいのです」
「なるほど、競争は諦めて隅っこに逃げる。アンタらしいな」
「隅を調べるのは意外に大変なんですよ。特殊な能力だって要るんです!」と言って胸を張る。
「なんで?」
「これも例え話ですが、そのためには隅を突っつく道具が要るでしょう。もしそれが重箱だとすると、つついて取った物を観る顕微鏡も必要ですね。観えたものが何かを知るには、深い知識も要るのです。分からなければ文献を調べなければならないし、もしそれが新発見なら、既に誰かが公表していないか調べ……」

「分かった分かった。もういい! 結局なにが言いたいんだ」
「私には膨大な時間が必要なのです」
「時間ならいくらでもあるだろう。無職なんだから」
「時間は有限。二人暮らしでケンカをしたら瞬く間につぶれます」
「半日くらい簡単につぶれるな」
「そんなものではすみません。喧嘩は後を引くから最低三日、長ければ一生です」
「しつっこいね。それでどうした」
「QPには我が家の主権を上げたフリをして、全ての時間を奪うつもりなんです。未だ道半ば…」

命とは時間と思う。自分が自由に使える時間が大切だ。それが命と考える。私の時間は着実に増えている。 こうして私の命もだんだん増えていく。
『幸せだなぁ。僕は君といるときが一番幸せなんだ。僕は死ぬまで君を離さないぞ、いいだろう(*^。^)』
                        1・8・4

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【2014/01/25 00:00】 | 生きる知恵
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No title
蝦夷地の人
>1・8・4

おぉ〜!
前回にも増してまいどまいど、「ごちそうさまです」っ!!!!!
うふふふ・・・

時には時間ドロボーにもご注意を。

殺し文句が上手
カスミ草
PPさん、今回も最後は殺し文句で締めましたね!
これじゃ、中島公園に来るオシドリ夫婦もPPさんにあてられて
長居は出来ませんよ。

命がだんだん増えていく→考え方ひとつで人生楽しいですね。

私が時間ドロボー
PP
>蝦夷地の人さん
注意したいのはやまやまですが、私自身が時間ドロボーですから、
注意される方ですね。
何も出来ないので、「ありがとう」「いただきます」「美味しいですね」
「ごちそうさま」とか、口だけは働かせています。



ジョークのつもりでした
PP
>カスミ草さん
最後の1行はジョークのつもりでした。表現が下手でごめんなさい。
QPの立場で考えれば、家事一切やらされて「死ぬまで君を離さないぞ、いいだろう」
とか言われたらガックリ来て、早く行ってくれと思うでしょうね。
そう思わないとしても「カンベンしてよ」の感じでしょう。

No title
空見
PPさんこんばんは。
うちは何もかもうまくいっていて幸せ夫婦、円満老後です、などと言う人が信じられないヒネクレ者の空見です^^;
だからPPさんの記事は好きだし、共感しますし、ウソがない、とも思います。
最後の加山雄三のセリフだけは勘弁してほしいけど~(笑)



やっぱり勘弁ですね。
PP
>空見さん
やっぱり勘弁して欲しいですよね。
さんざん人に奉仕させて最後までシガミツクとは酷いですね。
「……いいだろう」の一言がすごく効いています。
将来のある若い人の言葉を、高齢者が使うとギャグになりますね。

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