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朝食はテレビを消して話しながらとる。 「朝の食卓」の話題は近所の中島公園、健康、そして札幌シニアネット(SSN)、カラオケ、歩こう会など。
中学に入るとリセットされて新しい人間関係が生じる。 
楽しみにしていたが、期待に反して又もや悪戯三人組になってしまった。 
類は類を呼ぶといわれているが、三人三様性格もバラバラの寄せ集めだ。 
共通点はただ一つ、中学生にしては異常に背伸びしていることである。

米屋の息子はませている、中学生の知らない大人の世界を知っているのだ。
唐辛子屋の息子は自己顕示欲が強すぎる。
物事が上手く行かないとトンデモナイ悪戯をしでかす。
この二人は、息子を省略して「米屋」「唐辛子屋」と呼ぶことにする。

私は貧し過ぎた。不本意ながら行動は不良生徒と同じになってしまう。
木工所で働いていたが、そこには遊ぶ金が欲しい中学生も沢山来ていた。
米屋もその一人だ。そんなことだからアルバイト=不良というイメージを
先生方に印象付けてしまうのだ。

実際、アルバイト中学生は遊ぶことばかり考えている。
時には手を休めて、年上の女工さんにモーションかけたりしているのだ。
中学生、しかも1年の分際でホントに腹が立つ。
こちらは働かなければ食って行けないのだ。

話は変わるが、中学には若くて美しい女の先生が二人いた。 
一人は明るく朗らかな音楽の先生。 
もう一人は正直で生真面目な国語の先生である。
便宜上、朗らか先生、真面目先生と呼ぶことにする。

その日は校外学習だった。電車での往復だが帰りは先生方も疲れてくる。
しかし先生は決して座らない。先生にとっては厳しい校外学習である 
生徒を優先的に座らせるのが中学の方針らしい。  

座席に座って辺りを見ていると「朗らか先生」が、こちらに向って歩いてくる。
私の前で立ち止まると「ああ疲れた。座らせてね」と、言うが早いか私の膝の上に「ドッコイショ」と座ってしまった。

最初はビックリしたが、じわじわと先生の暖かさが伝わって来た。 
先生は私の事情を理解しているのだ。日頃の行動は不良生徒と同じだが、
そうしなければならない事情を理解して、それとなく伝えに来てくれたのだ。
”分ってるよ先生は味方だからね”と言われたような気がして心が和む。

禁止されているアルバイトに行くのは昼食や学費の為、休んだり無断早退するのはアルバイトの為だ。 しかし、表面的に見れば、遊ぶ金欲しさにアルバイトしたり、遊びたいから休む不良中学生と一緒だ。 

その他、様々な辛い事情を理解してくれていると思い、心から感謝した。 
これからは「朗らか先生」の前では無理をしてでも、規則に従い言うことも聞こうと決心した。
 
ところで朗らか先生のことは横に置いて、後で「真面目先生」が遭遇する、不幸な事件の話をしよう。 唐辛子屋が企てた「授業妨害テロ」の話である。

勉強は好き嫌いがハッキリしていた。真面目先生の国語は大好きだ。
朗読などは聴き惚れてしまう。 その日もいつもの様に先生の授業に集中していたが、なにか後ろの方がザワザワして来た。ハクション・クションとアチコチでクシャミが聞こえる。 その内に私の鼻もツンツンしだした。

振り返ると一番後ろの席に座った唐辛子屋が下敷きをバタバタさせている。
父親の工場から持って来た大量の胡椒を蒔いて下敷きで扇いでいるのだ。 
もう教室中で席を立ったり窓を開けたりの大騒ぎ。明らかに授業妨害テロだ。

騒ぎが収まると先生は唐辛子屋を前に呼びつけて叱ったが、先生の顔が青ざめている。 唐辛子屋の方は先生の前に立ち、なぜかニヤニヤしている。
ちょっとした実験のつもりかもしれない。彼は化学が大好きな実験マニアだ。 

先生はかっとなって手を上げた。上げたというよりも平手打ちをする構えだ。
振り上げた手は唐辛子屋のホッペを叩きに行った。 
まさにその瞬間、唐辛子屋はボクサーの様に体をかわした。
可哀想に先生の平手は空を切ってしまった。
 
面子を失った「真面目先生」は両手で顔を覆い泣きだした。
こうして唐辛子屋は不良生徒のレッテルを貼られることになった。
当然のことだ。

東京の学校では郊外学習でよく電車を使う。また同じような状況になった。
生徒が優先的に座り、先生が立っているのだ。

ありゃりゃ? 唐辛子屋の膝に「朗らか先生」が座っているではないか。
なんと言うことだ! 信じていたものが音をたてて崩れていくような気がした。

「優しい先生と信じていたのにカイジュウなんですよ」
「先生が怪獣?」
「懐柔なんですよっ!」
「そうか問題児に対する懐柔策か。先生も苦労するねぇ」

2012年3月22日更新情報 2011シンポジウムを易しく解説
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【2012/03/10 00:00】 | 照る日曇る日
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朗らか 先生・真面目先生
朱庵
よき時代でしたね。
いたずら中学生、生意気中学生の男の子達!
それにしても、生徒の膝に座ってしまう 朗らか先生!ほんわりnakapaさんの心持も伝わってきました♪かわいいですね~!

でも「朗らか先生」の生徒達への平等な慈愛精神にnakapaさんの
>なんと言うことだ! 信じていたものが音をたてて崩れていくような気がした。

その音までも聴こえてきそう・・・です(空耳かしら?・うふふ)

豊かな思い出いっぱいのワンパクいたずら中学生三人組、のお話まだまだ書いてくださいませ。

朱庵さんへ
nakapa
いつも暖かい感想をありがとうございます。
生徒の膝に座るのも一種のボディランゲージでしょうか?
効き目はありますね。
「ああ疲れた。座らせてね」と、言われたら
「どうぞ」と言って立つのは普通ですね。
立つのを躊躇する。立つ間を与えない。
「あうん」の呼吸です(笑)。


のん子
ええ~っ今だったらセクハラで訴えられそう~(爆)
中学生の男の子って女の先生にほのかな恋心を抱くんじゃないですか?
nakapaさんにとって初恋じゃなかったんでしょうか?(^_-)-☆
でも自分だけじゃなくて残念でしたね~(^^ゞ

のん子さんへ
nakapa
まだ、終戦後の混乱を引きずっている時代ですから、学校も荒れていました。
「朗らか先生」は膝に腰掛けることで一人ひとり悪ガキを懐柔しました。
セリフもいつも同じです「先生は悪戯する人の方が好きなの」
生徒同士の陰口で分かります。
それでもダメな場合は体育の先生に訴えて、生徒を反省させるのです。
その後、二人は結婚しました。これホントの話です。


ちゃちゃ
当時の様子が手に取るように浮かんできます。
これも、もちろん、nakapaさんの文才によるものです。何だか、涙が出てきてしまうような、切なく、悲しい時代の背景が見えても来ます。
皆さまと同じく、続編に期待しています。


ちゃちゃさんへ
nakapa
文才なんてとんでもないです。ただ昔を懐かしがっているだけです。
今はとても幸せです。正直言って幸せな生活は楽ですね。
日常的なことを楽しみながら、休み休み暮らしています。
全力を振り絞って生きていたときが懐かしく思い出されます。
線香花火のように、終わり近くなるとパッと明るくなって、
それから消えるのでしょうね。
暗くてどうもすみません。


ちゃちゃ
いいですねえ。
平々凡々に暮らしていることを
幸せだと思い、
急がず、休み休み暮らすなんて
いいなあ!
私もそういう暮らしをしたいな!


フラダン
とても面白かった!どちらの先生も私は好きです、
大人になっても、誰かの膝に座ろうとする、
懐柔さを持ち合わせた方がおりますが、大体は、
誰にでもしてるような気がします、、、
子供の心は純粋ですから、ナカパさんの気持ちが
良く判ります、でも朗らか先生は問題児を上手に
扱うすべを心得ていた、なかなかの方の様ですね




ちゃちゃさんへ
nakapa
確かに、今はノンビリ楽しく暮らしています。
5年前には、想像できないほど楽な生活です。
しかし、一番苦しい仕事がまだ残っています。
誰もが迎えなければならない、あの時です。
またまた、暗い話をして、すみません。

フラダンさんへ
nakapa
60年も前のことで、陰口をするのも悪いのですが、
「朗らか先生」はズルイのです。
生徒の苛めに遭って泣くまでは「真面目先生」と一緒ですが、
その後が違うのです。
教室を飛び出して、屈強な体育の先生を連れてくるのです。
そして、私たち純真な生徒は整列ビンタを食うのですよ。
その後、しばらくして体育先生と「ほがらか先生」は結婚しました。
これはホント。これだけでなく皆ホントです。

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