「事件? 発射実験じゃないのか」
「そうそう、発射実験です。中学生の私たちが一生懸命取組みました」
「そんなら事件だ。どうせろくなことではないだろう」
「月世界征服(米1950年)」という映画を観て興奮したのは中学生のころ。
宇宙に憧れた同級生3人で、ロケットを作ろうとした。
製作メンバーは米屋の息子と唐辛子屋の息子、そして経師屋の息子である私。
科学も技術も関係ない家庭で育ったイタズラ三人組が、初めてマトモなことに挑戦したのである。
「子供がロケット打ち上げなんてマトモじゃないよ」
「勉強しましたよ。宇宙旅行協会の指導を受けたのです」
「なんの勉強?」
「ロケットの作り方です。設計図とか…。目玉は燃料の亜鉛火薬ですね。」
「亜鉛で火薬?」
「そうなんですよ。亜鉛と硫黄を調合するのです。苦労しました」
枚方市にある「宇宙旅行協会」に入会し会費を払うと、毎月ガリ版刷りの会誌を送ってくる。それにロケットと火薬の作り方が書いてある。
発射実験場は幅の広い大きな道路工事現場に決めた。近くには作業員休憩所があった。 発射時刻は12時30分。 12時になると作業員は食事の為に休憩所に行くので無人になる。
12時29分45秒にカウントダウンと決めた。 「スリー、ツー、ワン、発射!」と映画のようにカウントして導火線に火をつけたが、ロケットまで届かないうちに消えてしまう。 実験だからこんなこともあろうと思い、準備はしてある。
予備の導火線を使ってやり直すとロケットまでは届いたが、今度は燃料に点火しない。 トラブル続きであせってしまう。 見つかったら大変なことになる。
1時には荒くれ作業員たちが戻ってくるのだ。 とにかく時間がない。
万策尽きて、ロケットを上に向けて立てて、その周りで焚き火をすることにした。 曲がりなりにも燃料に点火すればロケットは発射するだろう。
焚き火の勢いが強くなった。危険を避けるため50m離れた物陰に隠れ首だけを出して見守った。 ロケットがドッチに飛ぶか分からないからだ。
ここまで来た以上、何がなんでも燃料に点火して発射してほしかった。
贅沢は言っていられない。 どの方向でもいいから、とにかく飛んでほしいのだ。
突然の大音響にビックリしてロケットを見るのも忘れてしまった。
どこに飛んだかも分からない。
慌てて火を消し辺りを見渡すと、休憩所から作業員が飛び出すのが見えた。
こちらに向って走って来るではないか。 数十人の荒くれ男だ。
「見つかったぞ! 逃げろ~」とは言ったものの足がすくんで動けない。
3人でオロオロしている始末だ。
恐怖におののいたのはつかの間だった。 遠くから「おーい大丈夫か~」
と心配そうな声が聞こえる。どうやら逃げなくてもいいらしい。
「おい大丈夫か! 怪我はないか!」
捕まえに来たのではないと分かると、ちょっと自慢したくなった。
「ロケットの打ち上げをしていたのです。 燃料点火までは確認できたのですが、飛行方向の制御が難しかったですね…ペチャクチャペチャクチャ…」
「すげー音でビックリしたぞ。よかったよかった。怪我なくてよかったな~」
と、大勢の人が口々に言った。私の話など誰も聞いていなかった。
その「ロケット」は人を殺傷する力を持っている。 爆発音からして誰でもそう推測できる。 それなのに叱りもせず、ただ僕達が怪我もなく無事であることを喜んでくれている。
学校名も聞かれなかったので、後で先生から叱られる心配もない。
つまりお咎めなしだ。 ろくろく反省もしないで世の中は不思議だと思った。
挨拶しないとか、横入りしたとか、細かいことでは年がら年中文句を言われるのに、こんな大きな不始末をしても誰も文句を言わない。
「そうそう、発射実験です。中学生の私たちが一生懸命取組みました」
「そんなら事件だ。どうせろくなことではないだろう」
「月世界征服(米1950年)」という映画を観て興奮したのは中学生のころ。
宇宙に憧れた同級生3人で、ロケットを作ろうとした。
製作メンバーは米屋の息子と唐辛子屋の息子、そして経師屋の息子である私。
科学も技術も関係ない家庭で育ったイタズラ三人組が、初めてマトモなことに挑戦したのである。
「子供がロケット打ち上げなんてマトモじゃないよ」
「勉強しましたよ。宇宙旅行協会の指導を受けたのです」
「なんの勉強?」
「ロケットの作り方です。設計図とか…。目玉は燃料の亜鉛火薬ですね。」
「亜鉛で火薬?」
「そうなんですよ。亜鉛と硫黄を調合するのです。苦労しました」
枚方市にある「宇宙旅行協会」に入会し会費を払うと、毎月ガリ版刷りの会誌を送ってくる。それにロケットと火薬の作り方が書いてある。
発射実験場は幅の広い大きな道路工事現場に決めた。近くには作業員休憩所があった。 発射時刻は12時30分。 12時になると作業員は食事の為に休憩所に行くので無人になる。
12時29分45秒にカウントダウンと決めた。 「スリー、ツー、ワン、発射!」と映画のようにカウントして導火線に火をつけたが、ロケットまで届かないうちに消えてしまう。 実験だからこんなこともあろうと思い、準備はしてある。
予備の導火線を使ってやり直すとロケットまでは届いたが、今度は燃料に点火しない。 トラブル続きであせってしまう。 見つかったら大変なことになる。
1時には荒くれ作業員たちが戻ってくるのだ。 とにかく時間がない。
万策尽きて、ロケットを上に向けて立てて、その周りで焚き火をすることにした。 曲がりなりにも燃料に点火すればロケットは発射するだろう。
焚き火の勢いが強くなった。危険を避けるため50m離れた物陰に隠れ首だけを出して見守った。 ロケットがドッチに飛ぶか分からないからだ。
ここまで来た以上、何がなんでも燃料に点火して発射してほしかった。
贅沢は言っていられない。 どの方向でもいいから、とにかく飛んでほしいのだ。
突然の大音響にビックリしてロケットを見るのも忘れてしまった。
どこに飛んだかも分からない。
慌てて火を消し辺りを見渡すと、休憩所から作業員が飛び出すのが見えた。
こちらに向って走って来るではないか。 数十人の荒くれ男だ。
「見つかったぞ! 逃げろ~」とは言ったものの足がすくんで動けない。
3人でオロオロしている始末だ。
恐怖におののいたのはつかの間だった。 遠くから「おーい大丈夫か~」
と心配そうな声が聞こえる。どうやら逃げなくてもいいらしい。
「おい大丈夫か! 怪我はないか!」
捕まえに来たのではないと分かると、ちょっと自慢したくなった。
「ロケットの打ち上げをしていたのです。 燃料点火までは確認できたのですが、飛行方向の制御が難しかったですね…ペチャクチャペチャクチャ…」
「すげー音でビックリしたぞ。よかったよかった。怪我なくてよかったな~」
と、大勢の人が口々に言った。私の話など誰も聞いていなかった。
その「ロケット」は人を殺傷する力を持っている。 爆発音からして誰でもそう推測できる。 それなのに叱りもせず、ただ僕達が怪我もなく無事であることを喜んでくれている。
学校名も聞かれなかったので、後で先生から叱られる心配もない。
つまりお咎めなしだ。 ろくろく反省もしないで世の中は不思議だと思った。
挨拶しないとか、横入りしたとか、細かいことでは年がら年中文句を言われるのに、こんな大きな不始末をしても誰も文句を言わない。
トラックバック(0) |
経師屋・唐辛子屋・米屋の息子達
朱庵 nakapaさんはなんと楽しい少年時代を経ているのでしょう!
夢を見るだけでなく即実践する行動力のある子供だったのですね!
導火線が消える様子、めげずに繰り返す様子、目に浮かんできました!
宇宙に憬れる中学三人組み、まだまだ埋もれた楽しいお話あるのでしょう!
掘り出して是非ご披露お願いします。
以前拙ブログへコメントくださった、愉快なお話!思い出して、にんまりしています。
いまどきの子供、経師屋・・・読める子もわかる子も少ないというか、いないかもですね・・・
唐辛子屋・・いいなぁ・・・
朝から楽しい時間をありがとう。
朱庵さんへ
nakapa 家は経師屋(きょうじや)と言っても終戦後は仕事がなくて大変でした。
店も焼かれてバラック暮らしです。
ブログにコメントしたとき「書いてみたら」とか言われたような気がします。
それを思い出しながら書いてみました。
少年時代は何をやるにも一生懸命だったので、書いてみたいですね。
しかし、読んで面白いかとなると難しいです。
空見 nakapaさんこんにちは。
「僕たちの七日間戦争」みたいで面白かったです。
それだけのことをして、よくオトガメがなかったデスね~良き時代だったのかな?昔は今と違い、けっこう子供も無茶をして遊んでましたよね(汗)
許された時代の楽しいお話、冒険の物語など、どんどん書いてください~(^人^)
空見さんへ
nakapa こんばんは。
考えてみれば、テレビが普及する前の子供時代は、
集まっては無駄話ばかりしていました。
無駄話のネタも始終作っていたような感じです。
今は喋れないからブログに書いてみました。
なんだか叉喋りたくなりました。無駄話の喋りっぱなしです。
のん子 ほんと、お怪我がなくて何よりでしたね。
でもnakapaさんってスゴイです!
私、科学とか物理ってチンプンカンプンですもの(汗)
その応用で花火とかも作れるんじゃないですか?
私、花火観るのって大好きです(^^)
のん子さんへ
nakapa 私も科学とか物理とか苦手です。ただ、科学的なフンイキが好きです。
真剣な目をして実験する科学者とか格好いいですね。
フンイキだけですから、本物の花火作りは無理です。
映画とかで科学者の役などできたら嬉しいですね。
禿頭ですが、返って科学者のフンイキでるのではないでしょうか。
フラダン 試行錯誤しながらの発射実験一応成功したのですね
nakapaが、そんないたずら少年だったとは意外です
でも、さすが悪戯もインテリぽいです(笑い)
大事に至らなくて何よりでしたが、叱られると
思ったのに叱られずに気を良くして自分達の
高度な実験を、認めても貰う為に一生懸命言い訳
して居る様子が可笑しかったです、あの時代は
おおらかで大人も叱る分別をチャンと知っていたの
ですね。。。
フラダンさんへ
nakapa 残念ながら成功したとは言えません。爆発音を聞いただけですから。
後は驚いてオロオロしていただけです。
ただ叱られなかったのが不思議で、今でも覚えているのです。
本当は感謝したり、有りがたく思わなければいけませんね。
こんなイタズラをしたのも、自慢したい一心です。
このあたりは今も変わりません。
お恥ずかしい限りです。
好奇心旺盛
コマクサ 「飛行方向の制御が難しかったですね…」とは
後に難しい事を選ばれたのですね。
読んで行くうちに宇宙が空が好きなんだ~~と一人納得しています。
今では考えられない事が経験したのは宝です。
コマクサさんへ
nakapa 「飛行方向の制御」とは、何んとも恥ずかしい限りです。
垂直安定版を付けただけの話です。
最期は焚き火でメチャクチャですから、あっても無くても同じことでしたが…
大きな爆発音と休憩所から飛び出して来た作業員にビックリしました。
それが強く印象に残っているので忘れられないのです。
朱庵 nakapaさんはなんと楽しい少年時代を経ているのでしょう!
夢を見るだけでなく即実践する行動力のある子供だったのですね!
導火線が消える様子、めげずに繰り返す様子、目に浮かんできました!
宇宙に憬れる中学三人組み、まだまだ埋もれた楽しいお話あるのでしょう!
掘り出して是非ご披露お願いします。
以前拙ブログへコメントくださった、愉快なお話!思い出して、にんまりしています。
いまどきの子供、経師屋・・・読める子もわかる子も少ないというか、いないかもですね・・・
唐辛子屋・・いいなぁ・・・
朝から楽しい時間をありがとう。
朱庵さんへ
nakapa 家は経師屋(きょうじや)と言っても終戦後は仕事がなくて大変でした。
店も焼かれてバラック暮らしです。
ブログにコメントしたとき「書いてみたら」とか言われたような気がします。
それを思い出しながら書いてみました。
少年時代は何をやるにも一生懸命だったので、書いてみたいですね。
しかし、読んで面白いかとなると難しいです。
空見 nakapaさんこんにちは。
「僕たちの七日間戦争」みたいで面白かったです。
それだけのことをして、よくオトガメがなかったデスね~良き時代だったのかな?昔は今と違い、けっこう子供も無茶をして遊んでましたよね(汗)
許された時代の楽しいお話、冒険の物語など、どんどん書いてください~(^人^)
空見さんへ
nakapa こんばんは。
考えてみれば、テレビが普及する前の子供時代は、
集まっては無駄話ばかりしていました。
無駄話のネタも始終作っていたような感じです。
今は喋れないからブログに書いてみました。
なんだか叉喋りたくなりました。無駄話の喋りっぱなしです。
のん子 ほんと、お怪我がなくて何よりでしたね。
でもnakapaさんってスゴイです!
私、科学とか物理ってチンプンカンプンですもの(汗)
その応用で花火とかも作れるんじゃないですか?
私、花火観るのって大好きです(^^)
のん子さんへ
nakapa 私も科学とか物理とか苦手です。ただ、科学的なフンイキが好きです。
真剣な目をして実験する科学者とか格好いいですね。
フンイキだけですから、本物の花火作りは無理です。
映画とかで科学者の役などできたら嬉しいですね。
禿頭ですが、返って科学者のフンイキでるのではないでしょうか。
フラダン 試行錯誤しながらの発射実験一応成功したのですね
nakapaが、そんないたずら少年だったとは意外です
でも、さすが悪戯もインテリぽいです(笑い)
大事に至らなくて何よりでしたが、叱られると
思ったのに叱られずに気を良くして自分達の
高度な実験を、認めても貰う為に一生懸命言い訳
して居る様子が可笑しかったです、あの時代は
おおらかで大人も叱る分別をチャンと知っていたの
ですね。。。
フラダンさんへ
nakapa 残念ながら成功したとは言えません。爆発音を聞いただけですから。
後は驚いてオロオロしていただけです。
ただ叱られなかったのが不思議で、今でも覚えているのです。
本当は感謝したり、有りがたく思わなければいけませんね。
こんなイタズラをしたのも、自慢したい一心です。
このあたりは今も変わりません。
お恥ずかしい限りです。
好奇心旺盛
コマクサ 「飛行方向の制御が難しかったですね…」とは
後に難しい事を選ばれたのですね。
読んで行くうちに宇宙が空が好きなんだ~~と一人納得しています。
今では考えられない事が経験したのは宝です。
コマクサさんへ
nakapa 「飛行方向の制御」とは、何んとも恥ずかしい限りです。
垂直安定版を付けただけの話です。
最期は焚き火でメチャクチャですから、あっても無くても同じことでしたが…
大きな爆発音と休憩所から飛び出して来た作業員にビックリしました。
それが強く印象に残っているので忘れられないのです。
| ホーム |