ダンス、カラオケ、麻雀、ゴルフ、その他、面白そうなことは何も出来ない。
だからと言って悲観することもない。 出来ないということは、好いことでも悪いことでもなく、一つの事実だと、私は思うのだ。
面白い遊びができないのなら、他のことをやるまでだ。 日本語ボランティアは「普段使っている日本語を利用して、外国人の支援が出来るのだから有難い」。 誰でも出来ると思っていたが、甘かった。 できないものが、もう一つ増えそうだ。
札幌市内のある所で「日本語勉強会」を開いている。 そこで「日本語ボランティア」を始めて1年になるが、登録しただけでほとんど活動していない。 それでも「受付当番」だけは回ってくる。 会員登録をしているのだから当然だ。
「ボランティアが足りないので、(先生役を)やってもらえますか?」
「いいですよ」と、軽く答えてしまったが、やがて後悔することになる。
「こちらの3人の方です」
可愛らしい3人の少女が立っていた。 おやっ、日本人じゃないのかな。
顔も服装も日本人のように見える。 目のパッチリした少女が答えてくれた。
「日本語学校デ 勉強シテイル モンゴル人留学生デス」
勉強する態度は昔の高校生のように真剣で真面目だ。 希望にあふれ若さいっぱいの姿は、見ているだけでも清清しい。 日本語を一日でも早く身に付けたいという気持ちが、全身に漲っている。
これはエライことになったと思った。 私はといえば、勉強を教える準備が全くできていないのだ。 まさか受付当番に来て「先生役」をするとは思わなかった。
それだけではない。私たちの席の近くには、メガネをかけた日本語指導の
ベテラン、H女史が陣取っているのだ。
彼女は、他の外国人の指導をしているのだが、私のグループに目を光らせているような気がしてならない。 自信がない私の ひがみ だろう。
1年前に見学に行ったとき、受付当番からH女史を紹介された。
「女史」と言うような男女を区別する表現は嫌いだが、Hさんにはビッタシだ。
「あなたは、日本語指導講習を受けましたか?」
メガネのフレームを右手で触りながら尋ねる。 厳しそうな感じだ。
「はあ、入会時講習を一回だけ……」と、答えたが、不満のようだった。
純真で学習意欲満々の3人の留学生、真面目で厳しそうなベテラン女史、偶然巻き込まれてしまったマヌケな私。 悲喜劇の舞台を構成するに十分な陣容だろう。
最初の15分くらいは、教科書を読んだり、発音を訂正したり、順調に進んで行く。 モンゴル3人娘の目がキラキラと輝いている。 それが私への尊敬の眼差しに見えてしまうのだ。 まさに至福のひとときである。
ページが進んで、文法のところになると、躓き始めた。 私の態度が次第にオドオドしてきたことが、自分でも分かる。 困ったことに、日本語文法など、苦手な英文法より、もっとひどい。 まったく分からない。 緊張して口が渇いてきた。
何か言うごとに、私の無知が露呈していくようだ。 3人娘が次第に不安になって行く様子が見て取れた。 日本語以外は話してはいけないことになっているのに、母国語でヒソヒソやりだした。
「助詞ノアトニ助詞デ、ヨイデスカ?」。 う~ん、参った。全然分からない。
純真な六つの目が私を見つめている。 近くで外国人を指導しているH女史が、こちらの様子を伺っているように見えるのは気のせいだろう。
生き甲斐を求めてボランティアをしているのに、何でこんな目に遭うのだろう。
皆さんの日本語の勉強を支援するために、私は今ここに居る。 しかし、足を引っ張っているようだ。 どうしたらいいだろう?

2009年5月札幌市中島公園
ここまで話すと、QPが、
「日本人だから日本語教えられると思ったら大間違いだよ」
と、余計なひと言。 言われなくても、身にしみて感じていることだ。
「喜怒哀楽を表現する言葉をバラバラにして分類するようなことには、
どうしても興味が持てないのです」
「興味がないなら、早いとこ止めなよ」
「遠くから勉強に来た外国人の為に役に立ちたいのです」
「アンタみたいのを いいフリこき と言うんだよ」
「留学生は、せっかく日本語学校で習っても話す機会がないと嘆いています」
「だからと言って、何ができるのさ」
「それを今、探っているところです」
「できないくせに手を出すと、周りが迷惑するんだよ」
不本意ながら、その通りになってしまった。 しかし、後講釈なら誰にもできる。 「それは大変だったね」とか、少しは同情してしてくれても良さそうなものだ。
QPには関係ないのだから、「うんうん、そうだね」と、無責任に同意してくれれば、それでいいのだ。 反省は自分一人でするから、反省のお手伝いなど要らない!
相変わらず気の利かない人だ。
ところで、助けを求めに待合室に行ったものの、先生役のボランティアは一人も居ない。 よく見れば、私にとって雲の上の人である「会の代表」がおられる。
考えてみれば、彼こそボランティアの代表であり、日本語指導のベテランでもある。 迷わず交代を求めた。 見習いの小僧が、親方に指図するようなものだが、この際仕方がない。
私はモンゴルの少女たちに、よい印象を持って故国に帰ってほしいと思っている。 代表だって同じ考えのはずだ。 その為に、私に出来る最良の方法を選んだのである。 褒めてもらってもおかしくない。
そう思おうとしても、はやり気になる。 隠れるようにして教室を覗いてみると、モンゴル3人娘が、代表を囲んで熱心に勉強する姿が見えて、一安心。
そして、指導に集中しているH女史の凛とした姿も見える。 私さえ教室から消えれば、全ては丸く治まるのだ。 いつものように教室には真剣に勉強する留学生と、それを支援するボランティアがいる。
みんな静かに、それぞれの役目を果たしている。 私ばかりが大騒ぎ。
「悲しいドラマ」は私の心の中にしか存在しない。
「すっかり、勉強意欲を失いました」
「勤労意欲もね」と、QP。
「虚弱体質に、脳老化症が加わったような気がします」
「そうね」
「あなたが病気になっても、介護する自信がありません」
「いいのよ。 そんなこと気にしなくて」
「………」
思わず目頭が熱くなって言葉にならない。

2009年5月札幌市中島公園
「私だって、しないんだから」
えっ! なんだって。 目的語は、なんだ。 ちゃんと日本語しゃべれ!!
だからと言って悲観することもない。 出来ないということは、好いことでも悪いことでもなく、一つの事実だと、私は思うのだ。
面白い遊びができないのなら、他のことをやるまでだ。 日本語ボランティアは「普段使っている日本語を利用して、外国人の支援が出来るのだから有難い」。 誰でも出来ると思っていたが、甘かった。 できないものが、もう一つ増えそうだ。
札幌市内のある所で「日本語勉強会」を開いている。 そこで「日本語ボランティア」を始めて1年になるが、登録しただけでほとんど活動していない。 それでも「受付当番」だけは回ってくる。 会員登録をしているのだから当然だ。
「ボランティアが足りないので、(先生役を)やってもらえますか?」
「いいですよ」と、軽く答えてしまったが、やがて後悔することになる。
「こちらの3人の方です」
可愛らしい3人の少女が立っていた。 おやっ、日本人じゃないのかな。
顔も服装も日本人のように見える。 目のパッチリした少女が答えてくれた。
「日本語学校デ 勉強シテイル モンゴル人留学生デス」
勉強する態度は昔の高校生のように真剣で真面目だ。 希望にあふれ若さいっぱいの姿は、見ているだけでも清清しい。 日本語を一日でも早く身に付けたいという気持ちが、全身に漲っている。
これはエライことになったと思った。 私はといえば、勉強を教える準備が全くできていないのだ。 まさか受付当番に来て「先生役」をするとは思わなかった。
それだけではない。私たちの席の近くには、メガネをかけた日本語指導の
ベテラン、H女史が陣取っているのだ。
彼女は、他の外国人の指導をしているのだが、私のグループに目を光らせているような気がしてならない。 自信がない私の ひがみ だろう。
1年前に見学に行ったとき、受付当番からH女史を紹介された。
「女史」と言うような男女を区別する表現は嫌いだが、Hさんにはビッタシだ。
「あなたは、日本語指導講習を受けましたか?」
メガネのフレームを右手で触りながら尋ねる。 厳しそうな感じだ。
「はあ、入会時講習を一回だけ……」と、答えたが、不満のようだった。
純真で学習意欲満々の3人の留学生、真面目で厳しそうなベテラン女史、偶然巻き込まれてしまったマヌケな私。 悲喜劇の舞台を構成するに十分な陣容だろう。
最初の15分くらいは、教科書を読んだり、発音を訂正したり、順調に進んで行く。 モンゴル3人娘の目がキラキラと輝いている。 それが私への尊敬の眼差しに見えてしまうのだ。 まさに至福のひとときである。
ページが進んで、文法のところになると、躓き始めた。 私の態度が次第にオドオドしてきたことが、自分でも分かる。 困ったことに、日本語文法など、苦手な英文法より、もっとひどい。 まったく分からない。 緊張して口が渇いてきた。
何か言うごとに、私の無知が露呈していくようだ。 3人娘が次第に不安になって行く様子が見て取れた。 日本語以外は話してはいけないことになっているのに、母国語でヒソヒソやりだした。
「助詞ノアトニ助詞デ、ヨイデスカ?」。 う~ん、参った。全然分からない。
純真な六つの目が私を見つめている。 近くで外国人を指導しているH女史が、こちらの様子を伺っているように見えるのは気のせいだろう。
生き甲斐を求めてボランティアをしているのに、何でこんな目に遭うのだろう。
皆さんの日本語の勉強を支援するために、私は今ここに居る。 しかし、足を引っ張っているようだ。 どうしたらいいだろう?

2009年5月札幌市中島公園
ここまで話すと、QPが、
「日本人だから日本語教えられると思ったら大間違いだよ」
と、余計なひと言。 言われなくても、身にしみて感じていることだ。
「喜怒哀楽を表現する言葉をバラバラにして分類するようなことには、
どうしても興味が持てないのです」
「興味がないなら、早いとこ止めなよ」
「遠くから勉強に来た外国人の為に役に立ちたいのです」
「アンタみたいのを いいフリこき と言うんだよ」
「留学生は、せっかく日本語学校で習っても話す機会がないと嘆いています」
「だからと言って、何ができるのさ」
「それを今、探っているところです」
「できないくせに手を出すと、周りが迷惑するんだよ」
不本意ながら、その通りになってしまった。 しかし、後講釈なら誰にもできる。 「それは大変だったね」とか、少しは同情してしてくれても良さそうなものだ。
QPには関係ないのだから、「うんうん、そうだね」と、無責任に同意してくれれば、それでいいのだ。 反省は自分一人でするから、反省のお手伝いなど要らない!
相変わらず気の利かない人だ。
ところで、助けを求めに待合室に行ったものの、先生役のボランティアは一人も居ない。 よく見れば、私にとって雲の上の人である「会の代表」がおられる。
考えてみれば、彼こそボランティアの代表であり、日本語指導のベテランでもある。 迷わず交代を求めた。 見習いの小僧が、親方に指図するようなものだが、この際仕方がない。
私はモンゴルの少女たちに、よい印象を持って故国に帰ってほしいと思っている。 代表だって同じ考えのはずだ。 その為に、私に出来る最良の方法を選んだのである。 褒めてもらってもおかしくない。
そう思おうとしても、はやり気になる。 隠れるようにして教室を覗いてみると、モンゴル3人娘が、代表を囲んで熱心に勉強する姿が見えて、一安心。
そして、指導に集中しているH女史の凛とした姿も見える。 私さえ教室から消えれば、全ては丸く治まるのだ。 いつものように教室には真剣に勉強する留学生と、それを支援するボランティアがいる。
みんな静かに、それぞれの役目を果たしている。 私ばかりが大騒ぎ。
「悲しいドラマ」は私の心の中にしか存在しない。
「すっかり、勉強意欲を失いました」
「勤労意欲もね」と、QP。
「虚弱体質に、脳老化症が加わったような気がします」
「そうね」
「あなたが病気になっても、介護する自信がありません」
「いいのよ。 そんなこと気にしなくて」
「………」
思わず目頭が熱くなって言葉にならない。

2009年5月札幌市中島公園
「私だって、しないんだから」
えっ! なんだって。 目的語は、なんだ。 ちゃんと日本語しゃべれ!!
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ちゃちゃ おはようございます。日曜日の朝はなかばさんのブログ訪問を楽しみにしてPCを開きます。折々の中島公園の様子も嬉しいです。毎週、北海道に行っている気分になれます。
日本語学校の教師、私も興味を持ったことがありました。が完璧にできる外国語がないこと、日本の文化・歴史等に対する教養が乏しいことなどに気がつき、断念しました。時代が進み、今、外国の人たちは自国で日本語を勉強してくるようになりました。私より正しい書き順で漢字を書け、四字熟語をよく知っていたり、わらべ歌を唄えたり、驚くばかりです。先日も電車の中で隣で日本語学習のテキストを勉強している人に質問され、しどろもどろでそれに対応しました。
北京へ旅行した時の現地ガイドは、北京大学・日本語学科の出身でした。日本語はもちろん、地理や歴史に詳しく、かつ、日本には行ったことがないという言葉に、オバサン連は口々に「日本に来た時には家においでよ!」とラブ・コール。中国のすごさをここでも実感しました。
ウフフの小母はん お早うございます。
リラ冷えの朝になりましたね。藻岩山の中腹まで雲が上がるのを見ながら、読んでいます。
なかぱさんのボランティア精神は、ここでもまた発揮されて、留学生に日本語を教えるという、難しいことに挑戦しているのですね!
モンゴルのお嬢さんたちの熱い眼差しに囲まれて、これぞ至福のひと時・・・時間が例え短かったにせよ(ウフフ・・)そのような稀な経験をなさっていることを、素晴しいことと思います。
QPさんとの愉快な会話についつい噴出してしまい、さすがによくわかり合っていらっしゃるお二人なのだと、その絶妙さに楽しませていただいています。
もうこのオチには・・・なかぱさん!
あぁ~小母さんも、言われてしまいます、
>ちゃんと日本語しゃべれ!!
おーりーおばさん 最近は日本語の能力が怪しい日本人が増えてきて
いますから。日本人よりも日本語が上手な外国人に
あまり驚かなくなりました。
日本の文化や歴史を日本人よりきっちり熱心に
勉強しているから、こちらが教わりたいくらい。
札幌の新緑きれいでしょうね。
海外旅行をするよりも、北海道に長期滞在したいです。
ちゃちゃさんへ
なかぱ おはようございます。
毎週読んで頂いてありがとうございます。
中島公園の近所に住んでいるので、折に触れてPRしています。
反応があると嬉しいですね。日本語ボランティアについては甘く考え過ぎました。
いろいろ雑用もあるので、その方面のお手伝いだけにしようと思います。
北京への旅行のときの話、興味深く読ませてもらいました。
テレビに写る外国人も最近は日本語ペラペラの人が多いですね。
ウフフの小母様へ
なかぱ おはようございます。
ブログ読んでくれてありがとうございます。 挑戦などトンでもないことです。
たちまちギブアップです。今後は雑用などをして、陰から支えたいと思います。
「至福のひととき」は、大袈裟でないですよ。みんなそう言ってます。
家ではいつも、目的語がなかったり、主語がなかったり、お互い、いい加減な会話を
しています。自分のセリフだけきれいに直すのです。役得ですね(笑)。
おーりーおばさん へ
なかぱ そうですね。日本の文学賞も外国人に取られたりしています。
テレビには、日本人よりきれいに話すビジネスマンが毎日のように登場します。
日本人ばかりが下手になったとつくづく思います。
北海道は食料自給率198%ですから、自給派のおーりーさんにはピッタシですよ。
長期滞在、いかがですか。
なかぱ コメントありがとうございました。管理人は、ありがたく閲覧しました。
nonko-mn お疲れ様。
ウ~ンヤッパリ私には出来ないボランティアだわ
留守番くらいならでも無理だ。・・・
大変ですね。
QPさんとの会話・・・特に最後の落ちが良い笑ってしまったわ。
大丈夫よそんなことを言う人はチャント最後まで見てくれるんですよ。
QPさんの愛情イッパイでよゴチソウサマヾ(@°▽°@)ノヾ(@°▽°@)ノo(^-^o)
フラダン ナカパさんにとって深刻な問題を歯切れよく指摘するQPさんとの会話が
何ともいやはや、小気味良く愉快で、妙に納得します(笑い)
日本語ボランティアのお勉強して、ボランティアしてもらえませんか?
と以前にお誘いを受けた事ありました、チョッと興味を持ちましたが
充分な時間が持てなく辞退しましたが、今思うと正解でしたね、、
最後の落ちがなかなか、、、( ^^) _U~、
中島公園の桜と緑の路、青い空、白い雲、鴨の写真に清々しさ 倍増です!
nonko-mn さんへ
なかぱ はい、私にはできないボランティアと思いました。
先生役は辞めますが、雑用は山ほどありますから、
その中から、ホンのチリほど、やって行くつもりです。
「チリも積れば山となる」です。大したもんですよ(笑)。
オチは笑ってもらえましたか。ありがとうございます。
愛情いっぱいとは行かないと思いますが、そこそこの面倒は
お互い様とということで何とかなるのではないかと思っています。
楽観的に行きたいと思います。 まだ、安全圏ですから。
「まだはもうなり、もうはまだなり」とかもうしますが…。