皆さん、奈良時代の前は何時代かご存知ですか? もちろん飛鳥時代です。 こんなことも知らないで、外国人に日本語教えている困った人がいるんですよ。 どこの誰とは申しませんが、あなた方もご存知の、あの人です。
「あ、そう」
「いえいえ、麻生さんではありません。 もっと、ビンボーな人です」
去年の5月から外国人に日本語を教えるボランティアをしています。 ヒマなときだけ来ればよいと言うので、気軽に入会しました。 もうじき1年もたつと言うのに、たった3回の参加とは寂しいですね。 外国人と、未知の世界について話すのは、とても楽しみです。
しかし、勉強中の日本語は聞き取りに骨が折れるし、こちらの話を分かってもらうのも、楽ではありません。 ときには、「日本人なら分かって当然」と思いこんで、私の知らないことを聞いてくることもあるのです。 これは少々つらいですね。
「センセイハ京都とト奈良、ドチラ スキデスカ?」
と聞かれても、修学旅行以来いったことがないのです。 しかし、ここは会話の勉強の場ですから、正確な日本語で答えられれば、それで十分です。
「私は京都より奈良の方が好きです」
「ソウデスカー。 トコロデ…エー……」
「ところで」と、おっしゃいました。 一体なにを言いたいのでしょうか? 若いころ、アメリカ人の前で、「…バイザウエイ、アー…アー」と言ったきり、後が続かず黙り込んだことを思い出しました。
あの時は恥ずかしかったですね。 「江戸の敵は長崎で」というわけではありませんが、助け舟は出しませんよ。 何も言わずに、一休みすることにしました。のども渇いたし、水も飲みたいのです。
ペットボトルを口に当てると「センセイ、奈良時代ノ マエハ何ジダイ デスカ?」と、突然の質問。 まったく間の悪いときに嫌な質問をするものです。 だいたいボランティアなのに先生と呼ばれるのも気に入りません。 私は何回も自分の名前を教えているのに、覚える気が、まったくないらしいです。
ここの日本語練習は「お見合い方式」です。 外国人と日本人ボランティアは、別々に受付に申し込み、受付は来た順番に、外国人一人につき、日本人一人を「先生役」として指定します。 外国人にしてみると、「先生」はいつも変わるので、名前を覚えても、次の時には役に立たちません。それで「センセイ」と呼ぶのだと思います。
「日本はアメリカと戦争をして負けました。 日本のことは何でも悪い。 アメリカのことは何でも正しい。 私はそんな雰囲気のときに小学校に入りました」
「センソウ…、フンイキ?……ナニ?」
ナニと言われても分からないのです。 こうなると、正確な日本語を話すことなど、すっかり忘れてしまいました。 自分の言いたいことを言ってしまいます。
「特に歴史はダメですね。 アメリカの歴史なら習いましたよ。 コロンブス、メイフラワー号、ピューリタン、独立戦争、南北戦争、…」
「ナンポク?」
「シビル・ウォーですよ。 そうそう皆、アメリカ映画が大好きでしたよ」
「ドンナ映画デスカ?」
「もちろん西部劇ですよ。 『リオグランデの砦』とか『黄色いリボン』『赤い河』とか、西部劇の黄金時代でしたね」
「ジョン・ウェイン ネ」
映画は大好きです。 もう、こうなると日本語の練習なんかどうでもよくなってしまいます。 困ったものです。
「ジョン・ウェインも人気ありましたが、子ども達が一番好きなのは、ランドルフ・スコットです。 西部劇にしか出ない役者でね。ダントツの人気でした。 『オクラホマ無宿』なんか、クラスのほとんどが観に行きました。 男の子は全員ですよ。
教室の中では、ラストシーンの真似をよくしましたね。 ギャング団の首領ドゥーリンが保安官に撃たれて倒れるシーンなんですよ。 格好よかったですね。 保安官じゃあないですよ。 ドーリンがです。
保安官が後ろから『ドゥーリン』と呼ぶ。 ドーリンは振り返りざまに拳銃を向ける。だが撃たない。 撃たないのです。 なぜでしょうね。拳銃の故障でしょうか? 保安官がドーリンを撃つ。 バーン 崩れるように倒れるドーリン…。 こんな具合ですね。(倒れる真似をする)
ドーリンは名うての早撃ちですからね。保安官に負けるはずはないんですよ。 ドーリンは拳銃は抜いても撃たないのです。分かりますかこの気持……」
「ワカリマセン、ハヤスギテ、ワカリマセン。 センセイ奈良ジダイ ノ マエハ?」
せっかく、アメリカの話をして上げているのに、困ったアメリカ人です。 少しは身を入れて聞いほしいと思います。 奈良時代の前なんかネットで調べれば直ぐに分かるじゃありませんか。
彼はアメリカの大学を卒業しています。 こちらの日本語学校で2年間勉強した後、イギリスの大学院に行くそうです。 私は少しでも日本語勉強のお手伝いをしたいと思い一生懸命やっているのですが、なかなか思いが通じないのです。

雲間から「天使の梯子」が降りてきています。 昔、天使が梯子を上がり降りする姿を見た人がいたそうです。 そんなことが信じられる世の中は楽しいですね。 今日、お会いしたアメリカ人も雲の上から降りてきました。 天使の梯子の代わりに、飛行機を使いましたが…。
ところで、ビル・ドゥーリンはなぜ、死を望んだか分かりますか? 愛する妻、
エレインに逃亡者の苦しみをなめさせるよりは、自らの死を選ぶことを潔しとしたのです。
「外国人の為の日本語会話練習のはずなのに、あなたばかり話していますね」
「反省します」
「奈良時代の前は飛鳥時代ですね」
「そうですが…」
「アメリカ人に聞かれたとき、分からなかったのでしょ」
「フムフム」
「困った日本人とは、あなたのことですね」
「私は常識をわきまえていますよ」
「常識を…?」
「つまり、他人様の悪口など書けないのです」
このブログ「楽しい食卓、朝の食卓」は週一回、日曜日更新です。
「あ、そう」
「いえいえ、麻生さんではありません。 もっと、ビンボーな人です」
去年の5月から外国人に日本語を教えるボランティアをしています。 ヒマなときだけ来ればよいと言うので、気軽に入会しました。 もうじき1年もたつと言うのに、たった3回の参加とは寂しいですね。 外国人と、未知の世界について話すのは、とても楽しみです。
しかし、勉強中の日本語は聞き取りに骨が折れるし、こちらの話を分かってもらうのも、楽ではありません。 ときには、「日本人なら分かって当然」と思いこんで、私の知らないことを聞いてくることもあるのです。 これは少々つらいですね。
「センセイハ京都とト奈良、ドチラ スキデスカ?」
と聞かれても、修学旅行以来いったことがないのです。 しかし、ここは会話の勉強の場ですから、正確な日本語で答えられれば、それで十分です。
「私は京都より奈良の方が好きです」
「ソウデスカー。 トコロデ…エー……」
「ところで」と、おっしゃいました。 一体なにを言いたいのでしょうか? 若いころ、アメリカ人の前で、「…バイザウエイ、アー…アー」と言ったきり、後が続かず黙り込んだことを思い出しました。
あの時は恥ずかしかったですね。 「江戸の敵は長崎で」というわけではありませんが、助け舟は出しませんよ。 何も言わずに、一休みすることにしました。のども渇いたし、水も飲みたいのです。
ペットボトルを口に当てると「センセイ、奈良時代ノ マエハ何ジダイ デスカ?」と、突然の質問。 まったく間の悪いときに嫌な質問をするものです。 だいたいボランティアなのに先生と呼ばれるのも気に入りません。 私は何回も自分の名前を教えているのに、覚える気が、まったくないらしいです。
ここの日本語練習は「お見合い方式」です。 外国人と日本人ボランティアは、別々に受付に申し込み、受付は来た順番に、外国人一人につき、日本人一人を「先生役」として指定します。 外国人にしてみると、「先生」はいつも変わるので、名前を覚えても、次の時には役に立たちません。それで「センセイ」と呼ぶのだと思います。
「日本はアメリカと戦争をして負けました。 日本のことは何でも悪い。 アメリカのことは何でも正しい。 私はそんな雰囲気のときに小学校に入りました」
「センソウ…、フンイキ?……ナニ?」
ナニと言われても分からないのです。 こうなると、正確な日本語を話すことなど、すっかり忘れてしまいました。 自分の言いたいことを言ってしまいます。
「特に歴史はダメですね。 アメリカの歴史なら習いましたよ。 コロンブス、メイフラワー号、ピューリタン、独立戦争、南北戦争、…」
「ナンポク?」
「シビル・ウォーですよ。 そうそう皆、アメリカ映画が大好きでしたよ」
「ドンナ映画デスカ?」
「もちろん西部劇ですよ。 『リオグランデの砦』とか『黄色いリボン』『赤い河』とか、西部劇の黄金時代でしたね」
「ジョン・ウェイン ネ」
映画は大好きです。 もう、こうなると日本語の練習なんかどうでもよくなってしまいます。 困ったものです。
「ジョン・ウェインも人気ありましたが、子ども達が一番好きなのは、ランドルフ・スコットです。 西部劇にしか出ない役者でね。ダントツの人気でした。 『オクラホマ無宿』なんか、クラスのほとんどが観に行きました。 男の子は全員ですよ。
教室の中では、ラストシーンの真似をよくしましたね。 ギャング団の首領ドゥーリンが保安官に撃たれて倒れるシーンなんですよ。 格好よかったですね。 保安官じゃあないですよ。 ドーリンがです。
保安官が後ろから『ドゥーリン』と呼ぶ。 ドーリンは振り返りざまに拳銃を向ける。だが撃たない。 撃たないのです。 なぜでしょうね。拳銃の故障でしょうか? 保安官がドーリンを撃つ。 バーン 崩れるように倒れるドーリン…。 こんな具合ですね。(倒れる真似をする)
ドーリンは名うての早撃ちですからね。保安官に負けるはずはないんですよ。 ドーリンは拳銃は抜いても撃たないのです。分かりますかこの気持……」
「ワカリマセン、ハヤスギテ、ワカリマセン。 センセイ奈良ジダイ ノ マエハ?」
せっかく、アメリカの話をして上げているのに、困ったアメリカ人です。 少しは身を入れて聞いほしいと思います。 奈良時代の前なんかネットで調べれば直ぐに分かるじゃありませんか。
彼はアメリカの大学を卒業しています。 こちらの日本語学校で2年間勉強した後、イギリスの大学院に行くそうです。 私は少しでも日本語勉強のお手伝いをしたいと思い一生懸命やっているのですが、なかなか思いが通じないのです。

雲間から「天使の梯子」が降りてきています。 昔、天使が梯子を上がり降りする姿を見た人がいたそうです。 そんなことが信じられる世の中は楽しいですね。 今日、お会いしたアメリカ人も雲の上から降りてきました。 天使の梯子の代わりに、飛行機を使いましたが…。
ところで、ビル・ドゥーリンはなぜ、死を望んだか分かりますか? 愛する妻、
エレインに逃亡者の苦しみをなめさせるよりは、自らの死を選ぶことを潔しとしたのです。
「外国人の為の日本語会話練習のはずなのに、あなたばかり話していますね」
「反省します」
「奈良時代の前は飛鳥時代ですね」
「そうですが…」
「アメリカ人に聞かれたとき、分からなかったのでしょ」
「フムフム」
「困った日本人とは、あなたのことですね」
「私は常識をわきまえていますよ」
「常識を…?」
「つまり、他人様の悪口など書けないのです」
このブログ「楽しい食卓、朝の食卓」は週一回、日曜日更新です。
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ウフフの小母はん こんな夜中に独りウフフしています。
君(気味)が悪いなんていわないでください。
困った日本人が悪いのです(爆)
何時に変わらず、楽しませていただき御礼申し上げます。
露湖ボーイ

ある意味、give and take になりますよね
悪くない・ワルクナイ。
レラ ちょっとコメント方法にビビリマシタが・・・
外国人に日本語を教えるボランティアを宮崎の友人もやっていて、いつも感心していました。
nakapaさんのお人柄もいろいろな場面でライトアップ?されていますね。 尊敬!です。
エッセイも楽しく、時にはニヤリ、ときにはプッ!
と吹いています。
日本人同士の会話もかみ合わない昨今、どうぞお気張りくださいませ。応援しています。
ウフフの小母はん へ
なかぱ 楽しいコメント有難うございます。
ノロマで口で冗談言えないものですから、書いています。
実は私も一人で冗談書いて、一人で笑っているのです。
気味悪いですか(笑)。
露湖ボーイ さんへ
なかぱ 入会は歓迎されます。手弁当ボランティアです。
ちょうど募集は5月です。ただ、勉強中は日本語のみです。
ものによっては英語で話した方が通じ易いと思いますが、
辛抱強く日本語で説明します。やってみると、案外くたびれます。
レラさんへ
なかぱ コメント入力、ややっこしくてすみません。
スパム書き込み被害により「掲示板」一つ閉鎖したので、認証方式にしました。
応援有難うございます。笑ってもらって、応援してもらえば勇気百倍です。
虚弱体質ですが、パワーもらって、長生きできそうです。
フラフラダンサ〜 日本語教師のボランティアもしてらっしゃるの
ですか、、ナカパさんのライフフスタイルが
だんだん見えて来ました。口下手と云ってますが、
謙遜ですね(^^ゞ他国の方と向き合うなんて、
そう簡単に出来るものではありませんもの
困ったどころか、とてもユニークな日本人で
可笑しかった( ^)o(^ )
イチゴとリンゴの館 なんだカンダ言ってなかぱさんの方が楽しんでいる
様で、一度見学に行きたくなりましたよ(^○^)
色々な人種と会話できて素敵ですよ。
よくやれますねえ
ひよどり 日本語教師、よくやれていますねえ。
たしかに質問の範囲は広いでしょうから、対応が大変。
教師はオールマイテイーを求められます。
西部劇へ逃げるところ、とても愉快です。
私ならそれも出来ず、きっと立ち往生でしょう。
mitchi-jul ボランティアですが、相手から、どんな質問を
受けるのか体当たりですね。
適切に返答できない場合は、どう対応するの
ですか? 笑みがこぼれそう・・